「青物狙い=活きアジ」という常識は、厳寒期の海上釣り堀に関しては必ずしも正解ではありません。
水温が低下し、身体が思うように動かない冬の青物にとって、元気に逃げ回る活き餌は「追いかけるのが面倒な獲物」に見えていることがあります。
の前を通過しても無視し、結果として「青物はいるのに食わない」という状況が生まれます。
そこで活躍するのが、 動かず、強い匂いを発し、食べやすい「死にエサ」 です。
今回は、死にエサの選び方と、それに命を吹き込む「ドラッギング釣法」を紹介します。
冬の青物が「活きアジ」を無視する理由
なぜ、最強のエサであるはずの活きアジが通用しないことがあるのでしょうか。
理由は主に2つあります。
エネルギー効率の視点:追うカロリー > 得られるカロリー
変温動物である魚は、水温が下がると基礎代謝が落ち、活動量が極端に低下します。
人間で言えば、真冬にコタツから出るのが億劫になるようなものです。
この状態で、素早く逃げ回るアジを捕食するには莫大なエネルギーが必要です。
「アジを追いかけて消費する体力」が「アジを食べて得られるエネルギー」に見合わないと判断した場合、賢い大型の青物ほど捕食行動をキャンセルします。
消化能力の低下と捕食スイッチの鈍化
低水温下では消化能力も落ちています。骨が硬く消化に時間のかかる活き魚よりも、柔らかい切り身や死んだ魚の方が好まれる傾向にあります。
また、活発な捕食モード(スイッチ)が入りにくいため、視覚的な刺激(動き)よりも、嗅覚的な刺激(匂い)の方が、食欲をそそるトリガーになりやすいのです。
最強の「死にエサ」ラインナップ
冬の青物攻略に欠かせない、実績抜群の死にエサを紹介します。

カツオのハラモ・切り身:圧倒的な脂と血の匂い
最強の死にエサ筆頭です。特に腹身(ハラモ)部分は脂が非常に強く、水中で強烈な誘引効果を発揮します。
また、カツオ特有の血の匂いは青物の本能を刺激します。
【ポイント】
- カツオのハラワタ(内臓)も超特効エサです。見た目はグロテスクですが、集魚力は最強クラス。入手できるならぜひ持参しましょう。
スーパーの鮮魚コーナーで売っていることもあります。半額シールがあったら迷わず買っておき、冷凍ストックしておくといいでしょう。
冷凍イワシ(一本):視覚的ボリュームと柔らかさ
スーパーで売っている冷凍イワシをそのまま(あるいは内臓を出して)一本掛けにします。
アジに近いシルエットでありながら、全く動かないため「弱って死にかけた小魚」を演出できます。身が柔らかく、食い込みが良いのも特徴です。
サンマ・サバの切り身:コスパと入手性の良さ
スーパーで安く手に入り、エサ持ちもそこそこ良い万能エサです。短冊状にカットして使います。
皮目のキラキラしたフラッシング効果も期待できます。黄色に着色された市販品も視認性が良く有効です。
動かないエサに命を吹き込む「ドラッギング釣法」
死にエサはそのまま沈めておくだけでは、ただの「肉片」です(それでも食うときは食いますが)。
ここに「弱った魚」としての演出を加えるのが、 ドラッギング(Dragging:引きずり)釣法 です。
【用語解説】ドラッギングとは?
本来はバス釣りや船釣り(トローリング)で使われるテクニックです。船を風や潮に乗せて流しながらルアーを後方で引っ張り、広範囲のボトム(底)を効率よく探る手法を指します。タコ釣りの「ドラステ」などでも知られます。
海上釣り堀では船で移動することはできませんが、「エサを底で引きずり、魚の目の前を通して捕食スイッチを入れる」という原理は応用できます。
基本動作

- 仕掛けを底まで落とします(青物は冬、底に溜まります)。
- 着底したら、 ロッドを横にゆっくりと寝かせながら引く(さびく) か、 大きくゆっくりリフト(持ち上げ) します。
- イメージは、海底付近を死にそうな魚がフラフラと漂っている様子です。
スピード:亀のような遅さが重要
ここが最大のキモです。 絶対に早く動かしてはいけません。
活きアジが追えない魚を相手にしていることを忘れないでください。「亀が歩くようなスピード」で、じわ〜っとエサを動かします。
ポーズ:止める時間を長く取る
動かした後は、必ず止めます。この「ポーズ(静止)」の間にアタリが出ます。
冬場は 10秒以上 停止しても構いません。匂いが拡散し、青物が近づき、口を使うまでの「間」を十分に与えてください。
タックルと合わせの注意点
死にエサを使用したドラッギング釣法では、アタリの出方が活きアジとは異なります。
早合わせ厳禁
「ガツン!」と一気にひったくるようなアタリは稀です。
最初は「モゾモゾ…」とした違和感や、竿先が少し重くなるだけのアタリが多いです。これは青物がエサを吸い込んだり、様子を見ている段階です。
ここで合わせてもすっぽ抜けます。
穂先が完全に水面に突き刺さるまで 、あるいはリールから糸が引き出されるまで、じっと我慢してください。「送り込み」をするぐらいの余裕が必要です。
飲まれる前提のハリス選択
じっくり食わせるため、針を飲まれる確率は高くなります。
青物の鋭い歯でハリスが切られないよう、通常よりワンランク太いハリス(フロロカーボン8号〜10号)を使用するか、チモト(針の結び目)を補強しておくと安心です。
まとめ:冬の青物は「静」の釣りで制する
冬の青物は「動」の釣り(活きエサの泳がせ)ではなく、「静」の釣り(死にエサのドラッギング)で制することができます。
- 活きアジに反応がない時は、カロリー効率の良い「死にエサ」に変える
- カツオやイワシの匂いで寄せる
- 亀のようなスローな動きと、長いポーズで食わせる
この3点を意識して、周りが沈黙する中で価値ある一本を捻り出してください。「動かないエサ」こそが、動かない青物を獲るための最終兵器なのです。
